平成28年分の扶養控除等(異動)申告書 からマイナンバーの記載が必要です

今年の年末調整の実務では、従業員に平成27年分の「保険料控除申告書」とともに平成28年分の「扶養控除等(異動)申告書」を渡して記載してもらうことが一般的です。「扶養控除等(異動)申告書」には、新たにマイナンバーの記載欄が設けられています。

年内でもマイナンバー取得が認められる

税務関係書類等へのマイナンバーの記載は、原則として制度開始の平成28年1月以降になりますが、実務を考慮し、年末調整の機会を利用して年内(平成27年中)に、従業員から「平成28年度の扶養控除等(異動)申告書」(以下、扶養控除等申告書)を提出してもらう場合には、従業員本人とその扶養家族のマイナンバーを扶養控除等申告書に記載してもらう(企業がマイナンバーを取得する)ことが認められています。(図表1)

図表1 「平成28年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の様式例
図表1 「平成28年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の様式例

企業が、従業員からマイナンバーの記載された「扶養控除等申告書」を提出してもらうにあたって、「利用目的の明示」と「本人確認」が必要になります。

(1)利用目的を明示する

マイナンバーの取得にあたっては、この場合、利用目的が「源泉徴収票作成事務のため」であることを、社員へのメールや社内掲示板での告知などによって知らせます。
※源泉徴収や年金、雇用保険など、複数の利用目的をまとめて明示することも認められています。

(2)従業員と扶養家族の本人確認

マイナンバーの取得にあたっては、従業員とその扶養家族の本人確認が必要ですが、扶養家族については、従業員自身が行います。

(3)従業員Aとその扶養家族(妻・子)の本人確認の方法(図表2参照)

①従業員が扶養家族の本人確認を行う

従業員Aは、妻と子のマイナンバーを「通知カード」により把握(確認)し、「扶養控除等申告書」に記載します。Aは、妻と子が本人であることを当然確認できるため、身分証明書等の身元確認書類は不要です。

②企業の担当者が従業員の本人確認を行う

Aは、会社に「扶養控除等申告書」を提出します。その際、担当者は、Aの「通知カード」によってAのマイナンバーに間違いがないかを確認します。一般的に、従業員は入社時に本人確認をしていることから、担当者の知覚によって身元確認(A本人であることを見て判断)ができることから、これで本人確認が終わります(身分証明書等は不要です)。

図表2 扶養控除等申告書へのマイナンバー記載と本人確認の流れ
図表2 扶養控除等申告書へのマイナンバー記載と本人確認の流れ

電子的な方法で記載する場合

従来どおり、用紙に記載してもらう方法のほか、給与計算システムを利用して従業員本人がWeb上で直接、「扶養控除等申告書」にマイナンバーを入力して、番号確認のため、通知カードの写真データを一緒に送る方法もあります。

参  考   従業員の「個人番号カード」の企業による一括申請も可能に!

平成28年1月から、希望者に発行される「個人番号カード」について、新たに、企業が従業員からの申請を一括して行う方法が追加されるようです(10月5日以降正式発表予定)。
これまで公表されていた「個人番号カード」の取得方法は、郵送される「通知カード」に同封された「交付申請書」による申請か、スマートフォン等でのアプリによる申請でしたが、いずれも申請者が住所地の自治体窓口まで足を運んで、「個人番号カード」を受け取る必要がありました。
新たな方法では、企業が立地する自治体の職員が各社に出向いて本人確認することを条件に、「個人番号カード」を希望する社員からの申請を、企業が一括して行うことで、社員は自治体の窓口に足を運ぶことなく、後日、自宅への郵送などによって「個人番号カード」を受け取ることができるようになります(この方法の採否は自治体の判断によります)。
政府は、カード発行手続きを簡素化することで、普及促進を図るとしています。

年末調整・「保険料控除申告書」の記入ミスに注意!!

年末調整により生命保険料控除を受けるには、10月下旬頃に保険会社等から各従業員に届いた保険料控除証明書等が必要です。こうした書類をもとに保険料控除申告書を作成しますが、配偶者特別控除申告書も含め間違いが見受けられますので注意を促しましょう。

「生命保険料控除」の注意点

保険料控除申告書のうち「生命保険料控除」記入間違い等がしばしば見受けられます。
以下の点に注意してください。

注意点1 送られた「控除証明書」等を紛失しないように注意を促しているか?

生命保険や地震保険等の保険料控除を受けるには、保険会社等から送られてきた保険料の控除証明書の原本「保険料控除証明書」を添付しなければなりません。コピーは不可となっていますので、送られた控除証明書等をなくさないように従業員に注意喚起しましょう。

●控除証明書等を紛失したら?

もし紛失したときは、保険会社等に連絡し、再発行してもらいましょう。

注意点2 生命保険の種類と新旧区分が正しいかをチェックしたか?

生命保険控除には「一般の生命保険料」「介護医療保険料」「個人年金保険料」の3種類がありますが、例えば「介護医療保険料」なのに「一般の生命保険料」に記入しているといった間違いがあります。控除証明書に記載された「保険の種類」を確認し、正確に記入してもらいます。(図表-①)
また、「新・旧の区分」(注)欄については、控除証明書の内容をよく確認して、「新」または「旧」のいずれかに「○」を必ず付けてもらいます。(図表-②)
(注)平成24年1月1日以後締結のものが新契約で、同23年12月31日以前締結のものが旧契約となります。

注意点3 保険金等の受取人の氏名や続柄などが記載されているか?

「保険等の契約者の氏名」だけでなく、「保険金等の受取人」の「氏名」及び「続柄」なども漏れなく記載してもらいます。(図表-①)
※生命保険を契約したのが親族等であっても、本人が保険料を負担し、本人または配偶者や親族が受取人である場合は、本人の保険料控除の対象になります。

注意点4 「保険料等の金額」欄には1年間に支払った金額が記載され、正確に控除額が計算されているか?

保険料控除申告書には「本年中に支払った保険料等の金額」となっています。したがって本年1月から12月までの1年間に支払った保険料等の金額から分配を受けた剰余金等を差し引いた金額を記載します。そしてその金額をもとに生命保険料控除額を計算しますが、計算式ⅠまたはⅡや控除の最高額などがあり複雑ですので、間違いのないように正確に計算し記入してもらいましょう。(図表-②)

図表 給与所得者の保険料控除申告書の「生命保険料控除」の記入例
図表 給与所得者の保険料控除申告書の「生命保険料控除」の記入例
●控除証明書の金額に要注意!

控除証明書の証明金額については、保険会社によって表現が多少異なります。
例えば、証明額が「平成27年9月分までの保険料払込額」などとなっており、「参考」などとして、平成27年12月分まで支払ったときの申告額が記載されている場合もありますが、9月分までではなく12月分までの金額を記載します。

「配偶者特別控除申告書」の注意点

配偶者特別控除申告書(生命保険料控除申告書との兼用用紙)については、以下の点に注意してください。

注意点 「扶養控除(異動)申告書」に記載があるのに「配偶者特別控除申告書」に二重記載していないか?

例えば、パート収入のみの配偶者の年間収入が103万円以下の場合は「扶養控除等(異動)申告書」で配偶者控除を受けることができ、103万円超141万円未満の場合は「配偶者特別控除申告書」で配偶者特別控除を受けることができます。両方に記載してしますミスが散見されます。二重適用はできないので注意しましょう。
※配偶者の合計所得金額には、保険の満期返戻金や資産の譲渡所得なども含めます。

知っておきたい年金受給の手続き

一般的な会社員の年金は、国民年金と厚生年金の2階建てになっています。定年が近づくと気になる「それぞれの年金は何歳からもらえるのか」「もらうために手続きは必要なのか」といった素朴な疑問にお答えします。

Q1  年金は60歳から支給されるのでしょうか?

A1   国民年金は一律65歳から、厚生年金は生年月日等によって支給開始時期が異なりますが、将来的には一律65歳からの支給になります。

国民年金の支給開始年齢、金額

国民年金(老齢基礎年金)は、65歳から支給されます。平成27年4月現在、国民年金は満額で780,100円/年支給されます。満額受給するには、40年間(480月)保険料を掛ける必要があります。

厚生年金の支給開始年齢、金額

厚生年金(老齢厚生年金)は、生年月日・性別により65歳未満でももらえる場合があります(特別支給の老齢厚生年金)。厚生年金の支給金額は、加入期間と賃金の額によって一人ひとり異なります。

 

Q2 在職中に年金を受ける場合、支給額が減額されると聞いたのですが。

A2  在職しながら老齢厚生年金を受ける場合、支給額が調整されます(在職老齢年金)。
賃金と年金額に応じて、年金額の一部または全部が支給停止されます。

Q3 年金は自動的に国から支給されるのでしょうか?

A3  年金は自動的には支給されず、請求する必要があります。日本年金機構から送られてくる「年金請求書」に必要事項を記載後、添付書類とともに最寄りの年金事務所に提出することで支給が開始されます。

  • 特別支給の老齢厚生年金を受け取る場合
    支給開始年齢に到達する3か月前に、「年金請求書」とリーフレット(「年金を請求されるみなさまへ」)が日本年金機構から送付されます。この年金の請求をした場合は、65歳になったときに再度請求する必要はありません。ただし、65歳まで請求していない場合は、「年金請求書」が65歳のタイミングで届きます。
  • 65歳で受給権が発生する場合
    厚生年金加入期間が1年未満など、65歳で受給権が発生する方には、年金請求書に代えて「年金に関するお知らせ(ハガキ)老齢年金のお知らせ」が送付されます。その後、65歳に到達する3か月前に上記同様の「年金請求書」が送付されます。

経営者の引退に備える小規模共済のメリット

小規模企業共済制度は、小規模企業の個人事業主(共同経営者を含む)または会社等の役員の方が事業をやめられたり、退職されたりした場合に、生活の安定や事業の再建を図るための資金をあらかじめ準備しておく共済制度です。いわば「経営者の退職金制度」といえます。

制度に加入できる人は?

加入できるのは、常時使用する従業員が20人以下(商業・サービス業<宿泊業、娯楽業を除く>は5人以下)の個人事業主やその経営に携わる共同経営者、会社等の役員です。

ダブルの節税効果

この制度は、掛金を払い込む時と共済金を受け取る時、それぞれに節税を受けられるというメリットがあります。

1. 掛金を払い込む時

掛金の全額を、契約者個人の所得から控除することができます。掛金は月額1,000円から7万円の範囲(500円単位)で自由に設定でき、例えば毎月の掛金が最高額の7万円の場合、年間84万円の所得控除が受けられます。
また、掛金は前納することができ、前納月数が12か月以内であれば、掛金全額を前納した年分の所得から控除することができます。
さらに、一定割合の前納減額金も受け取れます。

●12月に1年分を前納すると

例えば、今年12月に加入し、同時に掛金を1年分(来年11月分まで)納付した場合、その掛金の全額を今年分の所得から控除することができます。また、前納の場合、一定割合の前納減額金も受け取れます。


2. 将来、共済金を受け取る時

将来、共済金を受け取る際、一括受取の場合には退職所得扱いに、分割受取の場合には公的年金と同様の雑所得扱いになり、どちらも所得控除のメリットがあります。
※共済金は、「一括」「分割(10年・15年)」「一括と分割の併用」の3つの方法から自由に選ぶことができます。

事業資金の貸付制度もある

契約者は、払い込んだ掛金の範囲内で事業資金等の貸付(無担保、無保証人)が受けられます(一定の条件あり)。

 

 

●共済金の受取事例

小規模企業共済制度は、加入中は節税面のメリットがありますが、加入の効果を最も感じていただけるのは、実際に共済金を受け取ったときです。
事例 1
長年、夫婦で続けていた小売業を高齢のため廃業しましたが、2,000万円ほどの共済金を受け取ることができました。資金繰りが苦しかったときには、何度も「解約したい」と思いましたが、毎月の掛金を最低限の1,000円にしてでも、解約せずに続けて良かったです。
事例 2
40代で大手スーパーを脱サラしてコンビニのオーナーになりました。開業時から毎月5万円の掛金で加入し、経営が苦しい時も、掛金を減額せずに20年以上払い続けました。このたび、高齢を理由に廃業しましたが、共済金が1,500万円もありました。これは大手スーパーの元同僚の退職金と比べても遜色のない金額でした。

自転車に対する規制強化への対応

飲酒運転や信号無視などの危険な行為を繰り返す自転車の利用者に「自転車運転者講習」を義務づけるなどの規制を盛り込んだ改正道路交通法が施行されました。今回の改正を機に、社内規定の見直しを検討してみましょう。

悪質な利用者に講習を義務づけ

改正法では、一定の危険行為をして、3年以内に2回以上違反があった悪質自転車運転者には、講習の受講が義務づけられました。受講時間は3時間で、手数料は5,700円です。この講習を受けないと5万円以下の罰金刑になります。

社内規定を見直しましょう

今回の道路交通法の改正により、講習につながる14項目の危険行為が定められています(注)。
自動車と異なり、自転車については、車両使用に関する社内規定の整備や、安全管理指導がきちんとなされていないのが実情といえます。一方で、従業員が業務中に自転車事故等を起した場合、会社の責任が問われることも予想されます。
就業規則においては、これらの項目をもとに自転車運転時の禁止事項を定めるとよいでしょう(参考参照)。

 

(注)講習につながる自転車の危険行為

  1. 信号無視
  2. 通行禁止違反(歩行者天国の走行など)
  3. 歩道における車両の義務違反(徐行違反)
  4. 通行区分違反(車道の右側通行など)
  5. 路線帯通行時の歩行者の通行妨害
  6. 遮断踏切(警報機の鳴っている踏切)立ち入り
  7. 交差点安全進行義務違反等(交差点を通行するときの他車の進路妨害など)
  8. 交差点優先車妨害等(交差点で右折するときの直進車の進路妨害など)
  9. 環状交差点安全進行義務違反等
  10. 指定場所一時不停止等(「止まれ」の無視など)
  11. 歩道通行時の通行方法違反
  12. 制動装置(ブレーキ)不良自転車運転
  13. 酒酔い運転
  14. 安全運転義務違反(携帯電話、傘の使用など)
●  参考 就業規則の例

第○条(自動車運転での禁止事項)
自動車に乗車する場合は、道路交通安全に関する法令に従って運転を行うとともに、以下の各号に定める運転をしてはならない。

  1. 酒酔い(飲酒)運転
  2. 心身が著しく疲労しているなど、正常な運転が困難な状態での運転
  3. 携帯電話を使用しながらの運転
  4. 傘をさしながら等危険な姿勢での運転
  5. ブレーキの不良その他整備不良状態での運転
  6. 天災地変、その他道路事情が安全運転に困難と予想されるときの運転
  7. その他、道路交通法令(改正道路交通法(平成27年6月1日施行)等)が禁止している事項に該当する運転

10月以降、「通知カード」と 個人番号カード交付申請書が届きます!

いよいよ今年10月から、国民一人ひとりに、マイナンバーを通知する「通知カード」が簡易書留で届きます。「個人番号カード」の交付申請書も同封されていますので、申請しましょう。

1 簡易書留でマイナンバーが通知されます

10月以降に、国民一人ひとり(世帯ごと)に、マイナンバーの通知が簡易書留で郵送され、次の3つが封入されています。

通知カード(表面案)
通知カード(表面案)

●封入物

  1. マイナンバーの「通知カード」
  2. 個人番号カード交付申請書と返信用封筒
  3. 説明書
    ※通知カードは大切に保管してください

※東日本大震災の被災者、DV等の被害者などやむを得ない理由により住民票の住所地で受け取れない方は、住民票のある市区町村に「居所情報登録申請書」を提出します(8/24~9/25)。

2 「個人番号カード」を申請しよう!

「通知カード」が届いたら、「個人番号カード」を申請しましょう(申請は任意です)。

個人番号カード(イメージ)
個人番号カード(イメージ)

「個人番号カード」とは、マイナンバーを記載した書類の提出や、様々な本人確認の場面で利用できるカードです。
カードに表示された氏名等の情報は、ICチップにも記録されますが、所得情報やプライバシー性の高い個人情報は記録されません。

 

3 「個人番号カード」の申請と受取方法

「個人番号カード」の申請・受取の流れ
「個人番号カード」の申請・受取の流れ

(1)郵送による申請

「通知カード」に同封される個人番号カード交付申請書(通知カードの下部分を切り取る形式になっている)に記入の上、顔写真を添付して、同封の返信用封筒で郵送します。

(2)オンラインで申請

個人番号カード交付申請書に記載されたQRコードを、スマートフォンで読み取り、顔写真を撮影し、オンラインで申請します。

(3)「個人番号カード」の受取

「個人番号カード」を申請したら、平成28年1月以降、市区町村から「交付通知書(はがき)」が届きますので、市区町村の窓口にて、「個人番号カード」を受け取ることができます(交付手数料は無料です)。
●受取時に必要なもの

  1. 「交付通知書(はがき)」
  2. 「通知カード」(返納します)
  3. 運転免許証等の本人確認書類
    ※「住基カード」を持っている場合は、カードを返却します。

4 「個人番号カード」のメリット

来年1月のマイナンバー制度開始後は、税や社会保障の手続きに際して、マイナンバーを記載した書類があれば、法律上義務づけられているマイナンバーの確認と本人確認が、このカード1枚で完了します(注1)。
また、「個人番号カード」で様々なサービスが利用できるようになります。
●個人番号カードのメリット

  1. マイナンバーを証明する書類になる。
  2. 本人確認ができる公的な身分証明書になる。
  3. 行政手続きのオンライン申請が利用できる。
  4. 印鑑登録証、図書館カード、健康保険証として利用できる。
  5. 民間のオンライン取引や口座開設に利用できる。
  6. コンビニで各種証明書を取得できる。  など
    ※検討中のものを含みます。

(注1)「通知カード」でも、マイナンバーの確認は可能ですが、成りすましの防止等のため、運転免許証やパスポートなど、本人であることを証明する書類(本人確認書類)が必要になります。

 

企業(法人)には法人番号が届きます!

マイナンバー制度では、国民一人ひとりに付けられるマイナンバー(個人番号/12桁)のほか、すべての法人に付けられる「法人番号」(13桁)があります(注2)。利用や取得等に厳しい制限のあるマイナンバーと違い、その利用について制約がありません。法人番号は、平成27年10月から11月下旬にかけて、国税庁より全法人企業に通知され(注3)、平成28年1月以降に開始する事業年度の法人税申告などの際に記載が必要になります。
(注2)一法人に一番号のみ。法人の支店・事業所等や個人事業者には法人番号は付されません。
(注3)登記上の本店所在地に通知書を郵送します。

売掛金管理の徹底

~黒字化・資金繰り改善のヒント~

黒字化や資金繰り改善のためには、何から着手すればよいでしょうか。月次決算の一つひとつの勘定科目の数値をよく吟味することで、そのヒントが見えてきます。例えば、それほど売上が伸びていないのに、売掛金が急増している場合は、その中味をよく吟味しましょう。

請求書は、毎月、確実に発行していますか?

売掛金の回収漏れがないように、請求書は決まった様式で毎月一定日(毎月20日締め、月末締めなど)に必ず発行していますか。
請求書の発行が遅れたり、請求内容(価格・数量、送料負担等)に誤りがあると、クレームにもつながり、それが原因で得意先の支払が遅れることにもなりかねません。
売上、返品や値引きがあれば、すぐに売上の計上や修正が行われるよう、営業と経理の連絡を密にして、売上の計上漏れや請求ミスをなくしましょう。
また、値引きは、売上や利益の減少にもつながりますので、注意が必要です。

●売掛金管理のポイント
  • 売上や返品・値引きの情報が営業から経理へきちんと伝達され、漏れなく処理されている。
  • 請求書は、決まった様式で毎月一定日に必ず発行している。
  • 送料の負担(自社か相手先か)が明確になっている。
  • 得意先ごとの売掛金残高を確認し、回収遅れがあれば、すぐに対応している。

得意先ごとの売掛金残高を確認していますか?

売上げが伸びているときは売掛金の残高も大きくなりがちですが、売上げが伸びていないにもかかわらず、売掛金が増えているような場合があります。これは、売上があっても代金回収が進んでいないということですから、それだけ資金繰りは苦しいはずです。
得意先ごとに売掛金残高を確認し、回収遅れがないか確認します。そして、回収が遅れている得意先については、「なぜ、遅れているのか」、その原因と責任者をはっきりさせ、いつ、どのように回収するか、対応策まできちんと決めましょう。
回収遅れの原因が自社にあるような場合は、早急に手を打ちましょう。また、未回収の長期売掛金は、金融機関から不良債権とみなされる可能性もあるため、注意しましょう。

●自社に原因がある例
  • 回収遅れに対する責任やルール等が不明確なため、対応が遅れている。
  • 営業担当者が、成績(売上)アップのため、支払のよくない取引先にも販売している。
  • 自社のクレーム対応等が不十分なため、取引先から支払を見合わされている。
  • 返品・値引きなどの漏れや請求金額の誤りがあり、取引先から支払を見合わされている。
  • 営業担当者への業績評価が売上のみで回収が評価の対象になっていないため、回収が疎かになっている。

会社と社長の金銭取引~公私の区別を明確に~

中小企業では、社長の個人資金を会社に貸したり、反対に社長が会社から資金を借り入れることがしばしば見受けられます。こうした会社と社長との取引について、きちんと処理していないと様々な問題が生じます。

1 長期未精算の仮払金は貸付金等とみなされることも!

長期間精算されていない社長への仮払金は、税務調査において貸付金とみなされ、認定利息が課税されることがあります。それに社長への多額な仮払金が計上されていると、金融機関は、「私的な支払があるのでは?」といった見方をしますし、社内の管理体制がルーズであると見られかねません。
このように、社長の仮払金が長期間精算されていないと、税務上の問題が生じます。
また、金融機関では、仮払金の内容を確認し、将来的に会社に返済されないものと判断すれば、資産価値はないものとみなすようです。なお、融資の際に、こうした仮払金の精算を条件にすることもあるようです。

ポイント 仮払金は早期に精算する

本来、仮払金は長くまた多く残る性格のものではありません。特に社長への仮払金は、早期に精算してもらいましょう。
また精算できていないものはきちんと説明できるようにしておきましょう。
なお、仮払金は月末までに精算を行い、翌月に繰り越さないことが基本です。

2 社長との金銭の貸し借りの常態化は公私混同と見られる?!

中小企業では、社長と会社の金銭の貸し借りはよくあることですが、適正に処理されていないと次のような問題が出てきます。

(1)会社が社長から金銭を借り入れた場合の問題点

例えば、会社の資金繰りが苦しいとき、社長個人から金銭を借り入れることがあります。その際には、社長個人の資金の出所を明確にしておきましょう。税務調査があった場合、確認事項の一つとなります。

●金融検査マニュアルでは・・・

社長からの借入金は、金融検査マニュアルでは、原則的に自己資本相当額に加味することができるとされています。つまり社長からの借入金も自己資本と考えて、債務者区分の判断が行われます。

(2)会社が社長に金銭を貸し付けた場合の問題点

会社から社長への貸付金は、決算書上は会社の資産となりますが、こうした貸付が常態化していたり、残高が前期と同じなどの場合は、金融機関から「現金化できない不良債権」あるいは「社長の公私混同」とみなして評価が下げられ、融資を受ける際にマイナスとなる可能性があります。

ポイント 役員との金銭等の貸し借りに際してはきちんと契約書を交わす

役員から金銭を借りる場合、あるいは役員に貸し付ける場合、その理由や期間、利息、返済予定等について株主総会や取締役会の承認決議を得て、議事録に残すとともに、第三者との貸し借りと同様にきちんと契約書(金銭消費貸借契約書)を取り交わしておきましょう。

参考       会社と役員の貸し借りの際の税務上の取り扱い

会社と役員との金銭の貸し借りについて、税務上の注意点は次のとおりです。

1  会社が役員から借り入れる場合

  • 無利息であっても原則的には問題はない。
  • 役員が利息を受け取った場合、所得税の申告が必要になる(会社は利息分を損金として処理できる)。
  • 利率(利息)が高すぎると高すぎる部分がその役員の給与となる。
  • 役員の貸付金は相続財産になる。

2  会社が役員に貸し付ける場合

  • 借りた役員は会社に利息を支払う必要がある。
  • 利率は1.8%(平成27年現在)以上とする。なお利率を1.8%未満とすると1.8%との差額が役員の給与として課税される。

(国税庁タックスアンサー「No.2606金銭を低い利息で貸し付けたとき」)

調査実績から見た相続税申告の注意点

国税局や税務署で収集した資料情報にもとづいて、相続税の申告額が過少と想定されるものや、申告義務があるのに無申告となっているものなどに税務調査が実施されています。

1 相続税の税務調査の状況

(1)実地調査件数の8割以上に申告漏れ等

「平成25年事務年度における相続税の調査の状況について」によると、平成23年中及び平成24年中に発生した相続を中心に行った実地調査の件数は11,909件(前事務年度比301件減)でした。

①申告漏れ等は82.4%

この実地調査件数のうち申告漏れ等の「非違」があった件数は9,809件で、その割合(非違割合)は82.4%となっています。つまり実地調査したうちの8割以上に申告漏れなどがあったことになります。

②申告漏れ財産は現金・預貯金等が多い

申告漏れの相続財産の金額は3,033億円で、その内訳を見ると、現金・預貯金等は1,189億円(構成比39.2%)と最も多く、次いで土地412億円(同13.6%)、有価証券355億円(同11.7%)と続いています(図表1)。

図表1 申告漏れ相続財産の金額の構成比(平成25事務年度)
図表1 申告漏れ相続財産の金額の構成比(平成25事務年度)

 

(2)海外資産の申告漏れが急増

資産運用の国際化に伴って、海外資産の相続が想定される「海外資産関連事案」(注)などについては、重点的に調査が行われています。
海外資産関連事案の実地調査件数は753件(平成25事務年度)で、対前事務年度比104.4%となっています。相続税の実地検査件数が減少しているなか、海外資産関連事案の調査については増加しています。
海外資産に係る申告漏れ等の非違件数は124件(対前事務年度比109.7%)に増加し、申告漏れ課税価格は163億円で前事務年度の26億円に比べ620%と急増しています(図表2)

(注):「海外資産関連事案」とは以下のいずれかに該当する事案をいいます。

  1. 相続又は遺贈により取得した財産のうちに海外資産が存するもの
  2. 相続人、受遺者又は被相続人が日本国外に居住する者であるもの
  3. 海外資産等に関する資料情報があるもの
  4. 外資系金融機関との取引のあるもの等
図表2 海外資産関連事案に係る調査実績の推移(申告漏れ課税価格)
図表2 海外資産関連事案に係る調査実績の推移(申告漏れ課税価格)

2 相続税の申告漏れがないようにするには?

 

相続税の申告漏れ等があった場合、追加の税金(加算税など)を払うことになります。
また仮装・隠ぺいの意図があると判断されると重加算税が課される可能性もあります。
今年(平成27年)1月から相続税の基礎控除が縮小され課税される人の増加が見込まれています。
加算税などが課されないためにも、以下の注意点を押さえておきましょう。

注意点1 被相続人(亡くなった人)の現金・預貯金や有価証券に漏れがないか確認する

申告漏れ財産の約4割を現金・預貯金等が占め、1割以上を有価証券が占めています。税務調査では必ず現金や預貯金、有価証券が丹念に調べられるので、被相続人の現金・預貯金、有価証券については漏れなく調べ申告することが必要です。相続税の申告等を済ませた後から、貸金庫から被相続人名義の預金通帳が出てきたなどということがないようにしましょう。

注意点2 名義預金や名義株も相続財産に含める

名義預金あるいは名義株とは、配偶者や子孫などの名義になっているが、実際には被相続人がお金を出し、実質的に被相続人の財産と認定される預金や株式のことです。
例えば、子・孫名義の通帳を作り、毎年贈与税の基礎控除額(110万円)の範囲内で積み立て、贈与してきたつもりであっても相続税の税務調査では被相続人の名義預金と認定されます(つもり贈与)。
名義預金や名義株などは相続財産になりますので、漏れのないように注意しなければなりません。

注意点3 被相続人の海外資産を漏れなく確認する

海外資産についても重点的に税務調査が行われています。特に100万円を超える金額を海外に送金したり、海外から送金されたときは、銀行から税務署に海外送金等調書が提出され海外とのやり取りが把握されています。
例えば、被相続人が国外不動産を譲渡したときの譲渡代金を相続税の申告に入れていないと、税務調査で申告漏れを指摘されることになります。
被相続人に海外資産があったり、外資系金融機関と取引していた場合などは、すべてを漏れなく確認しておく必要があります。

※相続が発生した場合は、勝手に判断せず、専門家である税理士(会計事務所)にしっかりと相談しましょう。

マイナンバーの取り扱いを社内に周知しましょう

0月以降、マイナンバーが国民一人ひとりに通知されます。その前(9月中)に、社内に周知しておきたいことがあります。また、来年1月の制度の施行に備えて、準備しておきたい事項があります。

 

1 9月中に全従業員に伝えること

マイナンバーの通知が開始される10月までに、全従業員(パート、アルバイト等を含む)に次のことを伝えてください。

9月中に全従業員に伝えること
  1. 平成27年10月以降、住民票記載の住所にマイナンバーが記載された「通知カード」が簡易書留で届くこと。(※同封されているものは以下の3点)
    • マイナンバーの「通知カード」
    • 「個人番号カード」の申請書と返信用封筒
    • マイナンバーの説明書類
  2. 源泉徴収や社会保険関係の事務のために、会社から従業員にマイナンバーの提供を求めること。
  3. 「通知カード」や「個人番号カード」は、家族の分を含め、紛失しないよう大切に保管すること。
  4. 自分や家族のマイナンバーを法令で必要となる事務以外で他人に知らせないこと。

 

2 自社のマイナンバールールを決める

企業は、税や社会保険の事務手続きにおいてマイナンバーを取り扱うことになります。
マイナンバーへの対応について、情報漏えいや不正利用を防止するため、社内での取り扱いルールを決め、従業員に周知しましょう。

  1. マイナンバーの取扱担当者(総務・経理担当者等)を決定し、管理責任者(社長等)に報告する体制を整えます。
  2. マイナンバーを取り扱う業務を把握し、マイナンバーの取得方法などを決めます。
  3. マイナンバーが、記載された書面や入力された給与システムなどには、取扱担当者以外が、触れることのないようにします(業務に関係のない従業員の眼に触れないこと)。
  4. マイナンバーを書面で収集した場合には、施錠可能なキャビネットなどに保管します(鍵の管理者を決めること)。
  5. 法令で定められた目的以外で「通知カード」「個人番号カード」のコピーやマイナンバーのメモをとらないこと。(マイナンバーを法令で定められた事務以外で取得することはできません)。
  6. マイナンバーが記載された書面を机の上に放置したり(置き忘れ)、ゴミ箱に捨てたりしないこと(ルールに基づいて廃棄する)。
  7. 給与計算システムなどの業務システムは、利用権限(ユーザIDやパスワード)を設定します。
  8. インターネットにつながっているパソコンで作業を行う場合は、ウイルス対策ソフトを導入し、自動更新機能を活用し、常に最新状態にしておきます。
  9. マイナンバーの入力作業などを行うパソコンについて、情報漏えい(のぞき見)の防止のために設置場所などを工夫します。
    • 人の出入りが少ない場所で使用する。
    • 作業現場を間仕切り等で区分する。
  10. マイナンバーは、法令で定められた利用目的以外で保管しないこと(マイナンバーの記載が必要な書類には、法定保存期間があるものがあります・図表1参照)。
  11. マイナンバーが記載された書面、入力されたデータの廃棄方法を決めておきます。
    • パソコン等で入力されたものは、その情報を削除する。
    • 書面に記載されたものは、読み取れないようにマスキングしたり、シュレッダー等で断裁する。
    • 廃棄(断裁)した事実の記録、データ削除時の操作ログを残す。

以上のようなルールを、業務マニュアル、社内規定に盛り込み、従業員に周知してください。
最初から、いきなり高度な取り扱いルールを作ることは難しいので、実際に運用しながら、少しずつ内容を充実・強化させていくとよいでしょう。

図表1 マイナンバーの記載が必要な主な書類の保管期間
書類名 (法令で定める)保管期間
税関係
  • 扶養控除等(異動申告書)
  • 退職所得の受給に関する申告書
提出期限の属する年の翌年1月10日の翌日から7年間
社会保険関係 雇用保険関係書類 退職した日から4年間
労災保険関係書類 退職した日から3年間
健康保険・厚生年金保険に関する書類 退職した日から2年間

 

マイナンバー対応点検チェックリスト

自社のマイナンバー制度対応のため、準備の状況を点検してみましょう。

  1. マイナンバーの事務取扱担当者・責任者を決めましたか?
  2. マイナンバーを取り扱う業務(源泉徴収票作成、健康保険、厚生年金保険届出等)を把握できていますか?
  3. 業務ごとに、マイナンバーを取得する時期や方法、本人確認の方法を決めましたか?
  4. マイナンバーが記載された書類の保管方法(施錠可能なキャビネット等)を決めましたか?
  5. マイナンバーが記載された書類の廃棄方法を決めましたか?
  6. マイナンバーの利用目的や禁止事項を全従業員(パート、アルバイト等を含む)に説明し、周知しましたか?
  7. 利用している給与計算ソフトが、マイナンバーを暗号化して保存する機能があるなど、安全管理に対応しているか確認しましたか?