残業代をめぐる2つの動向

安倍内閣は、時間の長さではなく仕事の成果で評価する、「残業代ゼロ」の対象を広げる「新たな労働時間制度」の創設を閣議決定しました。残業の中味を問うこうした動きの一方で、あらかじめ一定額を決めておく固定残業代の運用を厳格化する判決が出されており、こちらにも注目する必要があります。

1 「残業代ゼ口」制度の拡大を検討

労働基準法では、1日の労働時間を原則として8時間と定め、残業や休日の労働には、割増の賃金を支払うことを義務づけています。しかし、この適用外として、労働時間にかかわらず、「残業代ゼロ」の定額の賃金が、経営者とー体の立場にある「管理監督者」(たとえば部長職にある者)などに認められています。

「新たな労働時間制度」は、この「残業代ゼロ」が適用できる社員の対象を広げる内容となっています。具体的には、一定の年収要件(例えば1,000万円以上)を満たし、職務の範囲が明確で高度な職業能力を持つ者を対象に労働時間と賃金のリンクを切り離すことを検討するとしています。

2 固定残業代をめぐる最近の判決

(1)固定残業代とは?

固定残業代は、実際の残業時間の有無や時間数にかかわらず、一定時間数の残業代を毎月定額で支給する方法で、残業代を計算する手間が省けるうえ、人件費の総額が把握しやすいというメリットがあります。

ただし、この制度の導入にあたっては、固定残業代の取扱いについての規定を就業規則や雇用契約書などに明示しなければなりません。その場合、「営業手当」「 特殊手当」など、残業代とわかりにくい名称ではなく、残業代とわかるように明示する必要があります。

具体的には、固定残業代に該当する賃金項目(例:残業手当、みなし残業手当)、それが残業代に相当する旨、その金額とそこに含まれる残業時間をきちんと記載しなければなりません(例:固定残業手当2万5千円〈残業20時間分〉)。

(2)最近の裁判の傾向

固定残業代を巡る最近の裁判では、実際の残業時間に基づいて計算した賃金が、固定残業代を上回る場合には、その不足分を追加支給する必要があるとしたうえで、追加支給されていない場合には、固定残業代そのものの有効性が否定される可能性があります。就業規則等の整備とともに、その運用状況を踏まえた総合的な判断が行われているようです。

レジ現金の取扱いがおろそかになっていませんか?

小売業などの現金商売では、日々、レジ現金の出し入れが頻繁に行われるため、つい現金の取扱いがルーズになりがちです。レジの現金管理の基本が守られているか確認しましょう。

レジの現金管理の基本

レジの中にある現金は、以下のようにして管理しましょう。

基本1 レジの現金は売上代金と釣り銭の支払いに限定する

レジの現金は、お客様からいただく代金の入金とお客様への釣り銭の支払いに限定し、それ以外はレジから出し入れしないようにします。少額の経費の精算などは、レジのお金ではなく金庫内の小口現金で行います。

基本2 毎日の開店前は、釣り銭だけを入れておくようにする

開店前は、レジの中にはあらかじめ金額・金種を設定した釣り銭だけを入れておき、余分なお金は入れないようにします。

基本3 毎日の閉店後は入金額を確認する

閉店後は、実際の現金残高とレジの入金額が合っているか確認します。合っていない場合は、原因を解明します。

基本4 売上代金は、専用の預金口座をつくって全額預け入れる

閉店後のレジ内の現金は、翌日の釣り銭を残し、原則、毎日ATMや夜間金庫で預金口座に預け入れるようにします。なおこの場合の預金口座を売上代金の預入専用にしておくと営業日ごとの売上が通帳等でも把握できます。

このほかに自社独自の管理方法があると思いますが、その実施がきちんとなされているかどうかを確認しましょう 。

 

レジの現金管理のチェックリスト

  1. レジの中の現金は金種ごとに分けて、常に整理しているか。
  2. 早番と遅番が引継ぎを行うときは、双方立ち会いの下でレジの現金を確認しているか。
  3. 閉店後などにレジの金額を確認するときは2人以上で行っているか。
  4. 特に現金売上が多額な場合、2人以上で預け入れに行くようにしているか。
  5. 社長(または店長など)は定期的にレジの現金管理をチェックし、ルーズな部分があれば厳しく指導しているか。
  6. 自社独自の管理方法が実施されているかチェックしたか。

月次決算の重要性

毎月の業績を正しくつかみましょう

企業が、毎月の業績を正しくつかんで、経営に役立たせるためには、月次決算が不可欠ですが、月次決算が定着している中小企業は多くありません。しかし、金融機関が融資にあたって、正しい計算書類やこれに基づく経営計画を求める時代になりつつある現在、中小企業には、これまで以上に月次決算体制を確立することが求められています。

(1)未払いの経費などを月末に計上する

現金主義では、広告宣伝費などの販売費や、一般管理費(家賃、リース料、電話料、水道光熱費、社会保険料など)は、実際に支払った月の経費に計上されています。

しかし、通常、発生した月と実際に支払う月にズレが生じるために、月次の損益に影響を与える経費等もあります。そのような経費等については、請求書や納品書、契約書などをもとに未払金や未払費用として、発生した月に計上します。

(2)年払いの経費などを月割計上する

労働保険料や固定資産税、損害保険料など年払いや特定の月にまとめて支払う経費や賞与の中には、特定月の経費が多額に計上されることで月次の損益に影響するものもあります。

このような経費を月割計上(賞与は年間の見積額を月割計上)することで、発生額が平準化され、労働保険料の支払月や賞与支給月に費用負担が集中し、月次の損益が大きく変わるといったことを回避することができます。

(3)毎月、在庫を計上する

月初、月末の在庫を計上することで、毎月の売上原価と粗利益をつかむことができます。正確な月末の在庫を把握するには、毎月、実地棚卸を行うことが理想ですが、なかなか容易でないと思います。

そのため、予定原価率を用いて概算計上したり、棚卸の対象とする商品を毎月変えたり、金額の大きい商品に絞るなどの方法もあります。

(4)減価償却費を月次で計上する

機械装置や車両、建物などの減価償却費は、期末に計上しますが、年間の見積額をもとに12分の1づつ、毎月、月割計上します。

これによって、減価償却費の計上を平準化して、毎月の業績に反映させることができます。

 

月次決算のステップ・バイ・ステップ

会計処理の基本

  1. 毎日の現金残高合わせができていますか。
  2. 帳簿への記帳(入力)が適時・正確にできていますか。
  3. 証憑書類の整理保存がきちんとできていますか。

発生主義による月次決算

  1. 売上を出荷、相手方への納品時に計上し、仕入を入庫時に計上できていますか。
  2. 毎月の在庫を実地棚卸や概算計上等の方法で把握し、月次の売上原価、粗利益 (限界利益)を把握できていますか。
  3. 販売費や一般管理費を月次で計上できていますか。
  4. 減価償却費の月割計上ができていますか。
  5. 固定資産税や労働保険料などまとめて支払う費用を月割で計上できていますか。
  6. 売掛金や買掛金の残高管理を行い、請求漏れや入金遅れ、二重請求ミスなどの防止や、資金繰りに活用できていますか。
  7. 在庫管理を行い、誤発注、誤納品、滞留在庫、紛失・盗難、在庫切れの防止などに活用できていますか。

誤りの多いリース取引、返品等の消費税の処理

消費税率引上げ後6か月が経ちました。消費税の処理ではリース取引や返品等において間違いが多くありましたが、消費税の価格転嫁については、「中小企業における消費税の価格転嫁に係る実態調査」(日本商工会議所・平成26年7月2日公表)によると、62.7%の事業者が全て「転嫁できている」と回答し、前回の引き上げ時より大幅に改善しました。来年10月には消費税率アップが予定されていますので、処理について確認しておきましよう。

1 リース取引における誤り

事例1
A社はコピー機や車両をリース(オベレーティング・リース取引)により賃借しているが、コピー機は経過措置の適用対象で、車両は経過措置の適用対象外のため(図表1)、施行日(平成26年4月1日)以後、消費税率を5%と8%に区分する必要があったが、経過措置適用のコピー機のリース料についても8%で処理していた。

オペレーティング・リース取引の経過措置の適用と不適用による消費税率の違い、及びファイナンス・リース取引の消費税率
リース取引の消費税率の違い

〔解説〕
コピー機については経過措置適用のオペレーティング・リース取引なので、4月以後のリース料は5%で処理しなければなりません。車両については経過措置不適用なので、図表1のように平成26年3月31日までのリース料は5%、同年4月1日以後のリース料は8%となります。
※オペレーティング・リース取引とは、残価査定額がリース料から控除されるなどファイナンス・リース取引以外のリース取引をいいます。このリース取引の場合、指定日(平成25年10月1日)前に契約し、一定の要件を満たせば経過措置の適用を受け、施行日(平成26年4月1日)以後も消費税率は5%となります。

事例2
B社は会社の営業車3台をリースにより賃借していたが、そのリース取引が経過措置の適用を受けないオペレーティング・リース取引にもかかわらずファイナンス・リース取引と認識して、施行日以後のリース料も消費税率5%で処理していた。
〔解説〕
営業車3台のリース取引は経過措置不適用のオペレーティング・リース取引なので、施行日以後のリース料は8%で処理しなければなりませんでした。
この事例では、リース契約の内容をよく確認しておくことが必要でした。
※ファイナンス・りース取引は、原則的には売買取引とされ、図表2のようにリース資産の引渡時点の消費税率が適用されます。特例的に認められている支払いのたびにリース料を費用計上する場合でも、リース資産の引渡時点の消費税率が適用されます。

2 返品・値引などの際の誤り

事例3
卸売業の C社は、平成26年3月10日に商品Eを得意先に販売・納品したが、4月に入ってその得意先から返品の要請があり、今後の取引もあることなので4月20日に返品を受け消費税率8%で処理した。
〔解説〕
図表3のように、商品Eついては経過措置により消費税率5%で返品処理しなければなりません。というのも、施行目前に売上計上した商品等が施行日以後に返品となった場合、売上げを計上した時点の消費税率で返品処理することになるからです。

事例4
製造業のD杜は、平成26年2月に受注し製品を3月に納品して売上も計上したが、後日、注文数に食い違いが生じクレームとなった。結局、値引きすることで決着したが、対応に手間取り値引処理が4月になったので消費税率8%で処理した。
〔解説〕
この場合の値引処理は、経過措置により消費税率5%で行わなければなりません。というのも、施行日前に売上計上した商品等については、売上計上した時点の消費税率で値引処理することになるからです。

 

返品の際の消費税処理
平成26年に販売した商品が平成26年4月に返品になった際の消費税処理

消費税の処理の間違い防止に向けたチェックリスト

  1. 施行日をまたぐ取引について税率に誤りはないか請求書をよく確認しているか。※消費税の仕入税額控除の請求書等の記載要件と同時に消費税率等についてもチェックします。
  2. 返品や値引などで、税率に誤りがないよう返品等の商品等の販売(仕入)時点在などを確認した上で処理しているか。
  3. リース取引についてはその契約の内容を確認しているか※リース契約書等で、ファイナンス・リース取引かオペレーティング・リース取引か、経過措置が適用されているかなど確認が必要です。
  4. クレジットカードの請求書がある場合、領収書、利用明細票等により各取引の消費税率を確認しているか。※旧税率(5%)が混在している場合があります