企業が行った賃上げや設備投資などについて、いくつかの優遇税制※があり、上手に活用することで税負担を軽減することができます。3月末に決算を控える企業は、駆け込みで活用できるものがないか確認してみましょう。
1 従業員の賃上げに取り組んだとき-所得拡大促進税制
従業員の賃金を一定以上増加させた場合、賃金増加額の10%を法人税額から控除して、当期の税負担を軽減できる所得拡大促進税制があります(中小企業等は法人税額の20%が限度)。
この制度は、平成26年4月1日から平成27年3月31日までに開始する事業年度に適用する場合は、適用条件である賃金の増加率が「2%以上」と緩和され、利用しやすくなっています。
また、適用にあたっては、事前申請等の必要がなく、賃上げの対象には、ベースアップだけではなく、賞与や諸手当も含まれるため、3月末の決算賞与の支給などによって、適用条件を満たす可能性があります(図表1)
図表1 適用にあたっての確認事項
●所得拡大促進税制のポイント
- 事前申請等の必要がありません
- 制度は平成30年3月末までに開始する事業年度まで継続するため、今年度は利用できなくても、来年度は利用できる可能性があります。
- 資金の増加には、賞与や諸手当のアップも含まれます。
- 平均給与算定の対象が適用事業年度及びその前事業年度において給与の支給を受けた「継続雇用者」に限定されるため、新規採用が増加しても大丈夫です。
- 個人事業者も利用可能です。
2 機械や備品の購入など、設備投資を行ったとき
(1) パソコンなど少額の設備(取得価額30万円未満)を購入した場合
新品・中古を問わず取得した減価償却資産(取得価額30万円未満)の取得価額の全額(取得価額の合計額が300万円以下)を損金算入することができます。
対象となる減価償却資産
- 器具備品、機械装置、パソコン
- ソフトウェア、特許権、商標権
- 所有権移転外リース取引に係る賃借人が取得したとされる資産
(2) 機械装置などを購入した場合-中小企業投資促進税制-
中小企業者等が機械装置などを取得し、事業に利用した場合に、当期の税負担を軽減できる場合があります。具体的には、取得価額の30%の特別償却、または取得価額の7%の税額控除のどちらかを選択適用することになります(資本金3,000万円以下の法人に限る)。
中小企業投資促進税制
資本金等 |
特別償却 |
税額控除 |
3,000万円以下 |
30% |
7% |
3,000万円超1億円以下 |
30% |
適用なし |
対象となる設備の例
- 機械装置(1台160万円以上のもの)
- 器具備品・工具(1台30万円以上かつ複数台合計で120万円以上の試験または測定機器、測定・検査工具等)
- ソフトウェア(一つまたは複数の合計で70万円以上)
- 貨物自動車(車両総重量3.5t以上)
- 内航船舶(取得価額の75%が対象)
(3) 生産性向上に役立つ設備を購入した場合-中小企業投資促進税制の上乗せ措置-
中小企業投資促進税制の対象設備のうち、生産性向上に役立つ先端設備などを導入した場合には、優遇措置にさらに上乗せ措置が適用できる可能性があります。
上乗せ措置
資本金等 |
特別償却 |
税額控除 |
3,000万円以下 |
100% |
10% |
3,000万円超1億円以下 |
100% |
7% |
上乗せ措置の対象となる設備の例(先端設備を導入する場合)
旧モデルと比べて年平均1%以上生産性を向上させるなど一定の要件を満たす以下の最新設備※
- 全ての機械装置
- サーバー
- 試験または測定器
- 稼働状況の情報収集・分析・指示機能のあるソフトウェア
※先端投資等としてメーカーから証明書を受けとる。
(注意)平成26年1月20日から平成29年3月31日までの間に対象資産の取得等をした場合に適用されます。