第三者による個人保証の制限~民法改正~

民法創設以来、120年ぶりの大改正となる改正民法法案が国会に提出されています。改正案では、予てから問題とされていた、第三者による個人保証について、一定の制限を加える新たなルールが盛り込まれています。

 

保証契約にあたり公正証書の作成を義務づけ~保証の制限~

事業を営む親戚や友人などから頼まれて、義理人情で保証人になってしまい、後日、全財産を失うなどといった悲惨な事態が少なくありません。このことは、予てから社会的にも問題になっていました。改正民法では、個人保証について、一定の制限が規定されます(これは、連帯保証の場合も同様です)。
改正法案では、経営者以外の第三者である個人が事業のための借入(事業性借入)の保証人になる場合は、その保証契約締結の日前1か月以内に作成された公正証書において、「保証債務を履行する意思」を表示していなければ、原則として無効となります。

※改正法施行後の保証から適用されます。

 

  • 公正証書の記載内容と手続き (改正法465条の6)

保証契約の締結に先立ち、その締結の日前1か月以内に作成する「公正証書」の記載内容と手続きは以下の通りです。

  1. 保証人が次の事項を公証人に口授する。
    • 主たる債務の債権者及び債務者
    • 主たる債務の元本
    • 従たる全てのもの(利息、違約金、損害賠償等)の定めの有無と内容
    • 債務全額について履行する意思(連帯保証の場合は、その旨の意思)を有していること
    • 根保証の場合は、主たる債務の範囲、極度額、原本確定期日の定めの有無及び内容
    • 極度額の限度で債務全般について履行する意思を有している旨
  2. 公証人が保証人の口授を筆記し、保証人に読み聞かせ又は閲覧させる。
  3. 保証人が、筆記の正確なことを承認した後、署名押印する。
  4. 公証人が、上記全ての方式に従って作成したものである旨を付記して、署名捺印する。

ただし、「経営者による個人保証」は例外です

ただし、この個人保証の制限には、以下のような例外があります。

1.  主たる債務者が法人の場合

借り入れる法人(主たる債務者)の理事、取締役、執行役、またはこれらに準ずるものが保証人になる場合には、「保証の制限」は適用されません(公正証書は不要です),

2.  家族、親族、友人が取締役の場合

中小企業では、家族、親族、友人が取締役に就任していることがよくありますが、取締役である家族、親族、友人に対しても、「保証の制限」は適用されません。

3.  議決権の半数を持つ者等

借主(法人)の総株主の議決権の過半数を持っている者も適用が除外されます。
主たる債務者が個人の場合は、借主の共同事業者、借主の事業に現に従事している配偶者も、「保証の制限」は適用されません。

 

第三者による個人保証の原則禁止への動き

今回の改正は、個人保証そのものを廃止するということではありません。
これは、事業に関係していない第三者に個人保証を求める場合には、保証人が公証役場に出向いて、公証人の前で、保証する意思を示して、公正証書を作成するという手順を踏むことで、手続きを慎重にしようという趣旨によるものです。
一方で、実務では、個人保証に頼らない融資制度の確立に向けた動きも見られています。
たとえば、政府系金融機関や信用保証協会においては、第三者保証人徴求の原則禁止(特別な事情がある場合を除く)が行われています。
また、金融庁は、金融機関向けの監査指針において、「融資にあたり、経営者以外の第三者の個人連帯保証を求めないことを原則とする」旨の指針改正を行っています。
昨年には、中小企業経営者の個人保証のない融資を促進するために、金融庁や中小企業庁などの関与のもと、中小企業団体及び金融機関団体共通のルールとして「経営者保証に関するガイドライン」が策定され、会社と経営者の関係が明確に区分・分離されている、財務基盤の強化が図られている、経営の透明性が確保されているなどの一定の要件を満たす経営者に対して、経営者保証を求めない融資も行われています。

参考  保証人と連帯保証人の違い

保証には、単なる「保証(人)と」「連帯保証(人)」がありますが、「連帯」の二文字が付くことで、大きく意味内容が異なるので注意が必要です。

1. 「保証人」

単なる「保証人」には、主たる債務者(例えば借主)に弁済能力がないことが明らかになったときにのみ、債権者(貸主)に対して弁済責任を負います。
また、債権者から支払請求や差押えの執行を受けたとき、「まず債務者本人に請求せよ」「まず債務者の財産を差し押さえて取り立てよ」として、請求や執行をはねつける権利がみとめられているほか、保証人の数に応じて責任が軽減されます。

2. 連帯保証人は借主と同じ責任

「連帯保証人」の場合は、単なる「保証人」と違い、債権者が主たる債務者に請求せずにいきなり請求することができます。また、他に保証人がいるからといって連帯保証人の責任は軽減されません。これは、事実上、連帯保証人自身が借金したことと同じになるということです。

[注意]   保証債務(連帯保証債務)は相続されます

たとえば、あなたが保証人(連帯保証による保証債務を含む)になっている場合に、もしあなたが亡くなると、その保証債務もあなたの配偶者や子に相続されることになります。

120年ぶりの民法大改正

~中小企業にも大きな影響~
民法(債権関係)を改正する法案が今国会に提出され成立の予定です(平成27年6月15日現在)。
なお、実際の施行は平成30年からとなりそうです。
この改正は、1896年の民法制定以来、実に120年ぶりの大改正であり、改正項目は200項目に及びます。
特に短期消滅時効の廃止や法定利率の引下げ、個人保証の制限など中小企業にも影響がある大きな改正が盛り込まれています。

1. 改正の目的~国民にわかりやすい民法へ

今回の民法改正には、大きく2つの目的があります。
一つは、法律の専門家以外でも読みやすい条文にして、国民にとってわかりやすく整備するとともに、争いの多い事項、例えば賃貸借契約における「敷金」の規定などの明文化が図られます(敷金については後述)。
もう一つは、国民生活や時代等の変化に対応して、内容の実質的な変更などが行われます。

2. 消滅時効~原則5年に統一

一定期間の経過によって債権等の財産権が消滅する制度のことを「消滅時効」といいます。現行民法では、債権の消滅時効を「10年」とするとともに、業種ごとに異なる短期消滅時効(飲食店1年、小売店2年、医師3年など)がありましたが、以下のように改正されます。

消滅時効の改正法案

  • 債権者が権利を行使することができることを知ったとき(支払期限がきたとか)から5年
  • (債権者が知らなくても)権利を行使することができるときから10年(現行民法と同様)
  • 業種ごとに異なる短期消滅時効の規定の削除(商事時効を5年と定めた商法第522条も削除)

一般に債権者が「債権が発生したとき(=権利を行使することができる)」を知らないことは考えづらいため、消滅時効は原則5年に統一されます。

3. 法定利率の引下げ~まずは3%に

法定利率(当事者間で利率について合意がない場合の利率)が大きく変わります。従来、民事5%商事6%だった法定利率が民事、商事ともに、まずは3%になります。
この金利は固定ではなく、市場金利の変動を踏まえて3年ごとに見直されます(当初3%+変動利率)。

4. (連帯)保証の制限

個人保証について、保証(連帯保証の場合も同じ)が制限されます。
具体的には、経営者ではない個人(第三者)が事業のための借入(主債務)の保証人になる場合は、保証契約締結の1か月前以内に作成された公正証書において「自分は保証債務を履行する意思がある」旨を表示することや公正証書作成にあたり一定事項を公証人に口授するなどの条件を満たさなければ、保証債務の効力が生じないことになります。

5. 定型約款

事業者が不特定多数の者と取引する際に用いる定型的な契約条項を約款といいます。
インターネット通販などを利用する際、約款を読まずに「同意します」をクリックしてしまうことがよくあります。このような時の約款について、新たに「定型約款」という規定が設けられます。

「定型約款」とは・・・

    定型取引(ある特定の者が不特定多数の者を相手として行う取引であって、その内容の全部または一部が画一的であることが双方にとって合理的なもの)において、契約の内容とすることを目的として特定の者により準備された条項の総体をいいます。

(1) 定型約款の「みなし合意」

この定型約款の「個別の条項」を契約の内容にするために「みなし合意」の規定が設けられ、例えば、インターネット通販において、定型約款が契約内容であることを事業者が明示していれば、相手が約款を理解していなくても「同意します」をクリックすれば、正式に契約したものとみなされます。

「みなし合意」の条件

  1. 定型約款を契約内容とする旨の合意をしたとき
  2. 定型約款を準備した者があらかじめその定型約款を契約内容とする旨を相手に表示していたとき

(2) 相手方の利益を一方的に害する条項は無効

一方で、「みなし合意」を無条件で是認すると、例えば、「当社はいかなる事情があっても一切の責任を負いません」という条項を定めた会社が、意図的に注文書と異なる粗悪品を送付した場合でも、法的責任を追及できないことになり、明らかに正義公平に反します。
そのため改正法案では、相手方の利益を一方的に害するような規定は信義則違反として無効になります。これは、定型約款の相手方の不意打ちになる条項等を除外するためです。
また、次のような場合は、契約後に事業者の判断(相手方の合意なし)で定型約款を変更することが可能です。

定型約款が変更できる場合

  1. 相手の利益になる場合
  2. 契約目的に反しない合理的な場合(事業者にとって必要な場合)

6. 敷金

前述した賃貸借契約における敷金について、「単に経年劣化による傷みだけの場合、補修費用分を敷金から差引くことはできない(補修費用は大家の負担)」ことは法解釈上、当然なのですが、民法に明文規定がありませんでした。
改正法案では、単なる経年劣化は借り主に修理義務なし、敷金は借り主に原則返還することなどが明文化されます。
※改正民法は、平成30年からの施行になります。

 

民法改正の主なポイント
現在 改正法案
消滅時効 ・民法の原則10年
・業種によって消滅時効がばらばら
原則5年に統一
法定利率 5%の固定性 当初3%の変動制(3年ごとに見直し)
個人保証 第三者である保証人が自己破産する例が多数 公証人による確認手続き等が必要
約  款 明文規定がなく、位置づけがあいまい ・みなし合意により、「クリック注文」も正式契約
・相手方に不利益なものは無効
敷  金 通常の使用による損傷及び経年劣化について明文規定なし 経年劣化は借り主に修理義務なし、敷金は借り主
に原則返還などを明文化

中小企業であっても議事録を必ず作成・保存しよう!

昨年12月にコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)が発表され、大企業にはより透明・公正な経営が強く求められていますが、これは中小企業も同じです。株主総会や取締役会で議論し意思決定したことを記録した議事録を作成し保存することが重要になります。

株主総会等の議事録はなぜ必要なのか?

株主総会議事録や取締役会議事録の作成は法律で定められています。中小企業といえども必ず作成しなければなりません。

(1) 税務調査等で証拠となりうる書類

税務調査や万一裁判に訴えられたときなどにおいて、株主総会または取締役会が実際に開催され、審議して決議したかどうかが吟味されることがありますが、議事録は、その際の証拠となりうる重要な書類です。
実際に税務調査の際に、役員報酬等の増額を決めた株主総会議事録等がなかったため、その損金算入が認められなかったケースもあります。

(2) 多額の融資の際に議事録が必要

法律では、多額の借入には取締役会の決議が必要と定められています。したがって、多額の融資を申し込む際、金融機関は必ず取締役会の承認を受けた議事録が作成されているかどうか確認します。取締役会議事録が作成されていないと、融資が受けられないこともあります。

(3) 法律で作成・保存が義務

会社法で、株主総会及び取締役会の議事録の作成と保存が義務づけられています。この議事録の作成において記載等しなければならない事項が記載されていなかったり、作成した議事録が本店に10年間保管されていないと、取締役等は100万円以下の過料に処せられることがあります。

(4) 登記の際には議事録の添付が必要

株主総会で決議された事項には、商業登記が必要なものがあります。この登記をする際は、株主総会議事録を添付しなければなりません。

社内会議なども議事録を作っておこう
株主総会や取締役会のみならず、社内の様々な会議等についても、会議を開催したら必ず議事録を作成しておきましょう。
例えば、会議や商談などに伴って弁当や飲食物を提供した場合、会議費となるか交際費となるかを判断する際、議事録が実際に会議などを行った事実を証明する大事な資料となることがあります。

議事録に記載しなければならない事項は?

株主総会議事録や取締役会議事録に記載しなければならない主な事項は、次のとおりです。これらは、単に記録するだけでなく、審議の実態を記載して作成する必要があります。
●株主総会・取締役会議事録の記載事項

  • 開催日時と場所
  • 議事の経過の要領とその結果
  • 株主総会・取締役会で出た意見または発言の内容
  • 出席した取締役等の氏名
  • 議長の氏名
  • 議事録作成に携わった取締役の氏名    など

議事録の作成にあたっての注意点

議事録の作成に際しては、次の事項に注意する必要があります。

1. 議事録は企業自ら作成する
  • 議事録の作成を会計事務所等に依頼することがあるようですが、会計事務所等は指導・助言はできても作成することはできません。
2. 株主総会や取締役会は必ず適法に開催する
  • もし会議を開催していないのに議事録が作成されていると、議事録記載の決議自体が無効・不存在とみなされてしまいます。
3.  議事録には会議の実態を記録する
  • 各議案について賛成したのは誰で、反対意見を述べて反対したのは誰かなども含めて会議の実態を記録しておきます。なお、議事録作成のための会議で記録したメモや録音データなどは必ず保存しておきます。
  • 非公開会社(すべての株式について譲渡制限規定を設けている会社)で取締役会を設置していない会社については、取締役(社長)が意思決定をしたときに、その内容を記録した内部資料を議事録の代わりに作成しておきましょう。
4.  株主総会議事録は総会後速やかに作成する
  • 株主総会で決議された事項で登記が必要なものについては、2週間以内に登記しなければなりません。その際、議事録を添付することになるので、株主総会終了後、速やかに作成する必要があります。なお、役員が再任された場合も登記が必要です。
5.  議事録には出席取締役等に署名または記名押印してもらう
  • 株主総会議事録の場合
    法律では、議長や出席取締役・監査役の署名または記名押印は必要とされていませんが、内容等の確認のため署名または記名押印をしてもらいましょう。
  • 取締役会議事録の場合
    出席取締役及び監査役の署名または記名押印が必要です。