消費税法改正への対応(急務となっている「95%ルール改正」対策)

2段階の税率引き上げで現在の2倍、10%になることが予定されている消費税。駆け込み需要への対応や価格転嫁対策など経営者がなすべきことは山積みしているが、意外に知られていないのが、23年度税制改正で行われた「95%ルール改正」の影響だ。前号に引き続き、畑中孝介税理士に解説してもらった。

Qそもそも95%ルールとは何ですか。

A企業が納める消費税は原則として、課税期間中の課税売り上げに含まれる消費税額から課税仕入れに含まれる消費税額を控除して計算します。これは消費税を二重、三重に課してしまうことを避けるためです。また課税仕入れの消費税額については、あくまで課税売り上げに対応するもののみが仕入れ税額控除の対象になり、非課税売り上げに対応するものは対象とはしないのが原則ですが、取引一つ一つをきっちり区分するのはとても手間がかかるもの。こうした事業者の事務負担に配慮する観点から、売上高の95%以上を課税売上高が占める場合は便宜的に仕入れ税額控除を全額認める、という制度がこれまで利用されてきました。これを一般的に消費税の95%ルールと呼んでいます。

Qそのルールが23年度税制改正で変わったと……

Aはい。この95%ルールを適用した場合、本来仕入れ税額控除が適用されない部分まで仕入れ税額控除が適用できることになり、本来の税額に比べ納付税額が減少する「益税」が発生することが問題視されていました。消費税が5%から10%になれば、益税額(国税当局からみれば税の取り漏れも)2倍になります。この影響をできるだけ抑えるため、平成23年度税制改正で、課税売上高が5億円超の事業者については95%ルール適用から除外することが決まったのです。Q適用を除外された会社はどうしたのでしょうか。

A課税売上高が95%未満の企業と同様、「一括比例配分方式」と「個別対応方式」どちらかの計算方法で消費税額を算出することになりました。詳しい説明は省きますが、一括比例配分方式は事務負担が軽い簡便な手法、個別対応方式は原則に則った手間がかかる手法ととらえておけばよいでしょう。

Q算出方法の選択によって税額に違いは出ますか。

A売上高と仕入れの内容によって異なるので一概には言えませんが、一般的には個別対応方式を採用した方が企業にとって有利になるケースが多いといえます。しかし実際のところは、実務上の手間を考えて一括比例配分方式を選んでいる会社がかなりあるのではないでしょうか。「数十万円ぐらいの差だったら、手間もかかるしあきらめて一括比例配分方式を選ぼうか」ということは大いにあり得るからです。しかし消費税法の改正で税率が最終的に2倍に引き上げられるとなると、事情は違ってきます。両方式の納税額の開きも2倍になるからです。

たとえば売上高10億円規模の企業であれば、消費税5%の段階で一括比例配分方式と個別対応方式の税負担差額は30~50万円程度になるケースが考えられます。税率が10%になればこれが単純計算で60~100万円になるわけですね。消費税が廃止されたり税率が下がったりするということはまず考えられませんので、仮にこの状態が10年続いた場合、累計で600~1000万円の差が生じることになります。このようにデメリットが2倍になり、なおかつひたすら続くことを考えれば、税率が上がる前にきちんと個別対応方式を選択できる体制を整えておくことが大切でしょう。

Q個別対応方式を選ぶにはどうしたらよいでしょう。

A個別対応方式を選ぶには、消費税の課税仕入れを①課税売り上げに対応するもの②非課税売り上げに対応するもの③共通して対応するもの―の三つに分ける必要があります。①は全額控除の対象になりますが②は控除の対象外で、③は全体の売上高に占める課税売上高の割合に比例した額が控除対象となります。非課税売上高というのは一般的な会社では預金の利息や株の売却に関するもの、社宅の賃貸料などに限られ、全体の売上高の割合からすれば小さいはずですので、②の部分はそんなに大きな額にならないでしょう。したがって、①と②どちらにもあてはまらず③に振り分けられるものをできるだけ①にもっていく、というのが実務的なポイントになります。

Q具体的にはどのようなケースが考えられますか。

Aたとえば電話代の請求書が来た場合、それ以上詳しく区分されていない場合は③の共通対応にするしかありませんが、営業部門やコールセンター部門、つまり課税売り上げに対応する電話代であることがきっちり区別できていれば、①に振り分けることができます。

また広告代を例にとると、会社案内や名刺広告などは③の課税・非課税に共通するものとみなされますが、製品カタログや製品広告は非課税売り上げに対応するものと考えられます。商品名を連呼するテレビコマーシャルは①になりますが、企業名をいうだけでは③に区分されるということです。同じように、社長が飲みに行く相手が取引先であれば①になるし、銀行員と行けば③になります。

Q支出がどの売り上げに対応しているのか細かく管理していく必要があるということですね。

Aはい。支出内容を明確にすることと、それがどの部門に帰属している支出なのかをきっちりと区分することが極めて重要なポイントになります。しかしよく考えてみれば、会計の透明化と部門部経営管理の徹底が図られていれば、それは自然と実現できるもの。消費増税のこのタイミングを好機ととらえ、部門別で課税区分の集計ができるような会計システムへの切り替えなどを検討してみてはいかがでしょうか。セグメント管理の徹底と支出の透明化が経営管理の強化につながり、翻ってそれが消費税の適正化を含めた税務リスクの低減にもなる―このような一石二鳥にも三鳥にもなる状況を生み出すことは、決して不可能ではないはずです。

平成24年度税制改正法案が成立

平成24年度税制改正法案が成立しました。中小企業の各種特例措置の延長や個人の給与 所得控除の改正などが行われました。

企業関係

1中小企業投資促進税制の拡充・延長

中小企業が一定の設備投資やIT投資をした場合の税額控除や減価償却の特例措置に、 下記の見直し等が行われ、適用期限が2年延長されました(所得税においても同様)。
●対象資産の範囲に製品の品質管理の向上に役立つ工具、器具及び備品を追加
【適用】平成26年3月31日までの取得・事業使用分まで

2少額減価償却資産の損金算入特例の延長

中小企業者等の取得価額が30万円未満である少額減価償却資産の全額を損金算入(即時 償却)できる特例が2年延長されました(所得税においても同様)。
【適用】平成26年3月31日までの取得・事業使用分まで

3研究開発減税の延長

試験研究を行った場合の法人税額の特別控除制度について、試験研究費の増加額に係る 特別税額控除、または平均売上金額の10%を超える試験研究費の額に係る特別控除額を選 択適用できる措置の適用期限が2年延長されました(所得税においても同様)。
【適用】平成26年3月31日までに開始する事業年度まで(所得税は平成26年分まで)

4中小企業の交際費等の損金算入特例の延長

交際費等の損金不算入制度について、その適用期限が2年延長されるとともに、中小企 業の交際費等の損金算入の特例(年間600万円までの金額の90%を損金に算入)についても、2年延長されました。
【適用】平成26年3月31日までに開始する事業年度まで

個人関係・その他

5給与所得控除の上限設定

給与等の収入金額が1,500万円を超える場合には、給与所得控除額は245万円が上限になりました。
【適用】 ●所得税は平成25年分から適用
●住民税は平成26年度から適用

6住宅取得等資金贈与の非課税の拡充・延長

直系尊属(父母、祖父母など)から、マイホー_ムの取得資傘隼の贈与を受け牢、珍郎こ、一定金額について贈与税が非課税となる制度について、限度額は次第に減っていくものの制度そのものは延長されました。
また、省エネや耐震性能の高い住宅は、非課税枠が500万円上乗せされます。

非課税限度額
贈与の年 一般住宅 省エネ住宅、耐震性住宅
平成24年 1,000万円 1,500万円
平成25年 700万円 1,200万円
平成26年 500万円 1,000万円