売掛金管理の徹底

~黒字化・資金繰り改善のヒント~

黒字化や資金繰り改善のためには、何から着手すればよいでしょうか。月次決算の一つひとつの勘定科目の数値をよく吟味することで、そのヒントが見えてきます。例えば、それほど売上が伸びていないのに、売掛金が急増している場合は、その中味をよく吟味しましょう。

請求書は、毎月、確実に発行していますか?

売掛金の回収漏れがないように、請求書は決まった様式で毎月一定日(毎月20日締め、月末締めなど)に必ず発行していますか。
請求書の発行が遅れたり、請求内容(価格・数量、送料負担等)に誤りがあると、クレームにもつながり、それが原因で得意先の支払が遅れることにもなりかねません。
売上、返品や値引きがあれば、すぐに売上の計上や修正が行われるよう、営業と経理の連絡を密にして、売上の計上漏れや請求ミスをなくしましょう。
また、値引きは、売上や利益の減少にもつながりますので、注意が必要です。

●売掛金管理のポイント
  • 売上や返品・値引きの情報が営業から経理へきちんと伝達され、漏れなく処理されている。
  • 請求書は、決まった様式で毎月一定日に必ず発行している。
  • 送料の負担(自社か相手先か)が明確になっている。
  • 得意先ごとの売掛金残高を確認し、回収遅れがあれば、すぐに対応している。

得意先ごとの売掛金残高を確認していますか?

売上げが伸びているときは売掛金の残高も大きくなりがちですが、売上げが伸びていないにもかかわらず、売掛金が増えているような場合があります。これは、売上があっても代金回収が進んでいないということですから、それだけ資金繰りは苦しいはずです。
得意先ごとに売掛金残高を確認し、回収遅れがないか確認します。そして、回収が遅れている得意先については、「なぜ、遅れているのか」、その原因と責任者をはっきりさせ、いつ、どのように回収するか、対応策まできちんと決めましょう。
回収遅れの原因が自社にあるような場合は、早急に手を打ちましょう。また、未回収の長期売掛金は、金融機関から不良債権とみなされる可能性もあるため、注意しましょう。

●自社に原因がある例
  • 回収遅れに対する責任やルール等が不明確なため、対応が遅れている。
  • 営業担当者が、成績(売上)アップのため、支払のよくない取引先にも販売している。
  • 自社のクレーム対応等が不十分なため、取引先から支払を見合わされている。
  • 返品・値引きなどの漏れや請求金額の誤りがあり、取引先から支払を見合わされている。
  • 営業担当者への業績評価が売上のみで回収が評価の対象になっていないため、回収が疎かになっている。

会社と社長の金銭取引~公私の区別を明確に~

中小企業では、社長の個人資金を会社に貸したり、反対に社長が会社から資金を借り入れることがしばしば見受けられます。こうした会社と社長との取引について、きちんと処理していないと様々な問題が生じます。

1 長期未精算の仮払金は貸付金等とみなされることも!

長期間精算されていない社長への仮払金は、税務調査において貸付金とみなされ、認定利息が課税されることがあります。それに社長への多額な仮払金が計上されていると、金融機関は、「私的な支払があるのでは?」といった見方をしますし、社内の管理体制がルーズであると見られかねません。
このように、社長の仮払金が長期間精算されていないと、税務上の問題が生じます。
また、金融機関では、仮払金の内容を確認し、将来的に会社に返済されないものと判断すれば、資産価値はないものとみなすようです。なお、融資の際に、こうした仮払金の精算を条件にすることもあるようです。

ポイント 仮払金は早期に精算する

本来、仮払金は長くまた多く残る性格のものではありません。特に社長への仮払金は、早期に精算してもらいましょう。
また精算できていないものはきちんと説明できるようにしておきましょう。
なお、仮払金は月末までに精算を行い、翌月に繰り越さないことが基本です。

2 社長との金銭の貸し借りの常態化は公私混同と見られる?!

中小企業では、社長と会社の金銭の貸し借りはよくあることですが、適正に処理されていないと次のような問題が出てきます。

(1)会社が社長から金銭を借り入れた場合の問題点

例えば、会社の資金繰りが苦しいとき、社長個人から金銭を借り入れることがあります。その際には、社長個人の資金の出所を明確にしておきましょう。税務調査があった場合、確認事項の一つとなります。

●金融検査マニュアルでは・・・

社長からの借入金は、金融検査マニュアルでは、原則的に自己資本相当額に加味することができるとされています。つまり社長からの借入金も自己資本と考えて、債務者区分の判断が行われます。

(2)会社が社長に金銭を貸し付けた場合の問題点

会社から社長への貸付金は、決算書上は会社の資産となりますが、こうした貸付が常態化していたり、残高が前期と同じなどの場合は、金融機関から「現金化できない不良債権」あるいは「社長の公私混同」とみなして評価が下げられ、融資を受ける際にマイナスとなる可能性があります。

ポイント 役員との金銭等の貸し借りに際してはきちんと契約書を交わす

役員から金銭を借りる場合、あるいは役員に貸し付ける場合、その理由や期間、利息、返済予定等について株主総会や取締役会の承認決議を得て、議事録に残すとともに、第三者との貸し借りと同様にきちんと契約書(金銭消費貸借契約書)を取り交わしておきましょう。

参考       会社と役員の貸し借りの際の税務上の取り扱い

会社と役員との金銭の貸し借りについて、税務上の注意点は次のとおりです。

1  会社が役員から借り入れる場合

  • 無利息であっても原則的には問題はない。
  • 役員が利息を受け取った場合、所得税の申告が必要になる(会社は利息分を損金として処理できる)。
  • 利率(利息)が高すぎると高すぎる部分がその役員の給与となる。
  • 役員の貸付金は相続財産になる。

2  会社が役員に貸し付ける場合

  • 借りた役員は会社に利息を支払う必要がある。
  • 利率は1.8%(平成27年現在)以上とする。なお利率を1.8%未満とすると1.8%との差額が役員の給与として課税される。

(国税庁タックスアンサー「No.2606金銭を低い利息で貸し付けたとき」)

月次決算で正しい業績をつかもう!

月次決算は、毎月、前月の会社の業績をできるだけ早くつかんで、経営に役立てるために会社自ら行うものです。月次決算で直近の数値を把握することがきちんとできている会社は、より合理的で的確な経営を行うことが可能になります。

月次決算は決して難しくない

日頃、「現状の売上や利益を知りたい」「売掛金の残高や資金繰りの予定が知りたい」などと思っているのに、その情報が手元にないといったことはありませんか。このような経営に必要な情報を、いち早くつかむには月次決算が不可欠です。
月次決算は決して難しいものではありません。毎日、自社で正しい記帳と現金・預金の残高合わせを行うとともに、証憑書類をきちんと整理・保存し、発生主義で売上(売掛金)と仕入(買掛金)を計上できるようになれば、月次決算の大半はできたといえるでしょう。
まずは、このレベルを目指し、さらに月次決算の精度向上や早期化に取り組みましょう。

Step1 毎日、正しく記帳し、現金・預金の残高をきちんと合わせる

毎日、正しく記帳して、現金・預金の残高を合わせます。特に一日の終わりに現金の実際残高と帳簿残高を照合することはとても重要です。これは月次決算の基本であり、ここまでできれば、記帳(仕訳)の大部分ができたことになります。自社で毎日、記帳すれば、最新の業績、売上・仕入の状況、売掛金や買掛金の残高、資金繰りの予定など社長が知りたい情報がいち早くつかめるようになります。

Step2 証憑書類をきちんと整理・保存する

証憑書類とは、領収書や請求書、契約書など「取引があったことを証明する書類」のことです。証憑書類を受け取ったら、記載内容に誤りがないかを確認し、取引発生順に「証憑書番号」を付番し、取引内容を記帳したら、証憑書類を所定のファイル等に綴じます。
証憑書類が秩序正しく整理・保存されていれば、書類の紛失、誤記や転記ミス、領収書の二重使用、過大請求、社内不正などが起こりにくくなります。
また、「何を、いつ、いくらで、買った」など、社長が的確な経営判断を行うために必要な情報を迅速に入手することができます。
証憑書類の整理・保存は、会計の信頼性を高めるためにも、とても重要です。

Step3 売上と仕入を発生主義によって計上する

会計処理(記帳)の方法には、現金の動き(入出金)を見て、取引を記帳する現金主義と、商品の出荷、納品、入庫など物の動きを見て、取引を記帳する発生主義があります。
正しい月次の業績をつかむためには、売上と仕入について発生主義によって計上する必要があります。
また、発生主義では、仕入先からの納品時に買掛金を計上するため、この時点で支払うべき金額の増加がわかります。また、得意先への商品引き渡し時に売掛金を計上するため、この時点で、請求すべき金額の増加がわかります。このように発生主義を適用することで、資金繰りの予定も早めにつかめるようになります。

Step4 月次決算の精度を高めるため大きな経費等も発生主義で計上する

売上や仕入れを発生主義で計上できるようになれば、さらに月次決算の精度を高めていきましょう。
具体的には、毎月、在庫金額や減価償却費を計上したり、月次の損益に影響を与えるような金額の大きな経費、重要なものについても月割りで計上することで、発生額が平準化され、月次の損益への影響を回避することができます。

月次決算の精度を高めるには・・・

  • 労働保険料、固定資産税、損害保険料などの年払いの経費や賞与の年間見積額を月割計上する
  • 月次の損益に影響を与えるような販売費や一般管理費を月割計上する
  • 実地たな卸や概算計上によって、毎月、在庫を計上する
  • 減価償却費を月割計上する

Step5 直近の月次数値を金融機関に報告する

金融機関が融資の判断をするにあたっては、より正確な企業の財政状態を示す情報開示を求めており、中小企業には直近の月次数値等の提示が必要になってきています。
融資を受けている金融機関に対しては、定期的な業績報告を行いましょう。その際、直近の月次決算書等に基づいて社長自身の言葉で業績説明を行うことが理想です。このことは、「財務経営力の強化」として中小企業施策の中でも推奨されています。

 

損益分岐点売上高

変動損益計算書(図表1)は、経営に役立つ様々な業績数値を把握することができます。その一つとして「損益分岐点売上高」があります。損益分岐点売上高がわかると、経営に大いに役立ちます。

図表1 変動損益計算書
図表1 変動損益計算書

損益がトントンになる売上高

損益分岐点売上高とは、損益がトントン、つまり経常利益がゼロになる売上高のことです。図表を使って説明してみましょう(図表2)。

図表2 損益分岐点を図表で表す
図表2 損益分岐点を図表で表す

タテ軸を費用、ヨコ軸を売上高とすると、固定費は売上に関係なく発生する費用なので、ヨコ軸と平行な線(青色の線:固定費線)になります。固定費の上に乗せた変動費を表す斜線が総費用(緑色の線:総費用線)を表します。売上高を表す対角線(赤色の線:売上高線)と総費用の交点を損益分岐点といい、このときの売上高が損益分岐点売上高になります。
実際の売上高が損益分岐点売上高より上にあれば利益を表し(水色部分)、下にあれば損失を表します(黄色部分)。

損益分岐点売上高を活用する

損益分岐点売上高は、どうすれば求めることができるのかをそば屋さんを例にして、説明してみましょう(設例参照)。

設例 あるそば屋さんの1ヶ月のデータ
設例 あるそば屋さんの1ヶ月のデータ

 

このそば屋の損益分岐点売上高は、次の計算式によって求めることができます。

 

 

 

  • 損益分岐点売上高を求める計算式

損益分岐点売上高=固定費÷限界利益率 =60万円÷40%=150万円

計算すると、損益分岐点売上高は150万円になります。そばの数量で見れば、1杯500円ですから、1か月3,000杯になります。
損益分岐点売上高の考え方を応用すると、目標利益を達成する売上高などを求めることができるので、売上計画の作成などに役立ちます。

参考

  1. 前述のそば屋さんが、毎月20万円の計上利益を30万円にするには、1杯500円(現在4,000杯)のそばを何杯売ればいいか?
参考1
参考1

 

計算式 目標利益を達成する売上高=(固定費+目標利益)÷限界利益率

(固定費60万円+目標利益30万円)÷限界利益率40%=225万円

  • 225万円÷1杯500円=4,500杯→販売目標は、4,500

 

2 人件費や経費の値上がりで固定費(現在60万円)が10万円増加すると損益分岐点売上高はいくらになるか?

参考2
参考2

固定費が増加したときの損益分岐点売上高=(固定費+増加固定費)÷限界利益率
(固定費60万円+増加固定費10万円)÷限界利益率40%=175万円

  • 175万円÷1杯500円=3,500杯→損益分岐点売上高の販売数量は、3,500杯です。
    したがって、黒字を出すには、175万円(3,500杯)超の売上が必要です。

 

レジ現金の取扱いがおろそかになっていませんか?

小売業などの現金商売では、日々、レジ現金の出し入れが頻繁に行われるため、つい現金の取扱いがルーズになりがちです。レジの現金管理の基本が守られているか確認しましょう。

レジの現金管理の基本

レジの中にある現金は、以下のようにして管理しましょう。

基本1 レジの現金は売上代金と釣り銭の支払いに限定する

レジの現金は、お客様からいただく代金の入金とお客様への釣り銭の支払いに限定し、それ以外はレジから出し入れしないようにします。少額の経費の精算などは、レジのお金ではなく金庫内の小口現金で行います。

基本2 毎日の開店前は、釣り銭だけを入れておくようにする

開店前は、レジの中にはあらかじめ金額・金種を設定した釣り銭だけを入れておき、余分なお金は入れないようにします。

基本3 毎日の閉店後は入金額を確認する

閉店後は、実際の現金残高とレジの入金額が合っているか確認します。合っていない場合は、原因を解明します。

基本4 売上代金は、専用の預金口座をつくって全額預け入れる

閉店後のレジ内の現金は、翌日の釣り銭を残し、原則、毎日ATMや夜間金庫で預金口座に預け入れるようにします。なおこの場合の預金口座を売上代金の預入専用にしておくと営業日ごとの売上が通帳等でも把握できます。

このほかに自社独自の管理方法があると思いますが、その実施がきちんとなされているかどうかを確認しましょう 。

 

レジの現金管理のチェックリスト

  1. レジの中の現金は金種ごとに分けて、常に整理しているか。
  2. 早番と遅番が引継ぎを行うときは、双方立ち会いの下でレジの現金を確認しているか。
  3. 閉店後などにレジの金額を確認するときは2人以上で行っているか。
  4. 特に現金売上が多額な場合、2人以上で預け入れに行くようにしているか。
  5. 社長(または店長など)は定期的にレジの現金管理をチェックし、ルーズな部分があれば厳しく指導しているか。
  6. 自社独自の管理方法が実施されているかチェックしたか。

月次決算の重要性

毎月の業績を正しくつかみましょう

企業が、毎月の業績を正しくつかんで、経営に役立たせるためには、月次決算が不可欠ですが、月次決算が定着している中小企業は多くありません。しかし、金融機関が融資にあたって、正しい計算書類やこれに基づく経営計画を求める時代になりつつある現在、中小企業には、これまで以上に月次決算体制を確立することが求められています。

(1)未払いの経費などを月末に計上する

現金主義では、広告宣伝費などの販売費や、一般管理費(家賃、リース料、電話料、水道光熱費、社会保険料など)は、実際に支払った月の経費に計上されています。

しかし、通常、発生した月と実際に支払う月にズレが生じるために、月次の損益に影響を与える経費等もあります。そのような経費等については、請求書や納品書、契約書などをもとに未払金や未払費用として、発生した月に計上します。

(2)年払いの経費などを月割計上する

労働保険料や固定資産税、損害保険料など年払いや特定の月にまとめて支払う経費や賞与の中には、特定月の経費が多額に計上されることで月次の損益に影響するものもあります。

このような経費を月割計上(賞与は年間の見積額を月割計上)することで、発生額が平準化され、労働保険料の支払月や賞与支給月に費用負担が集中し、月次の損益が大きく変わるといったことを回避することができます。

(3)毎月、在庫を計上する

月初、月末の在庫を計上することで、毎月の売上原価と粗利益をつかむことができます。正確な月末の在庫を把握するには、毎月、実地棚卸を行うことが理想ですが、なかなか容易でないと思います。

そのため、予定原価率を用いて概算計上したり、棚卸の対象とする商品を毎月変えたり、金額の大きい商品に絞るなどの方法もあります。

(4)減価償却費を月次で計上する

機械装置や車両、建物などの減価償却費は、期末に計上しますが、年間の見積額をもとに12分の1づつ、毎月、月割計上します。

これによって、減価償却費の計上を平準化して、毎月の業績に反映させることができます。

 

月次決算のステップ・バイ・ステップ

会計処理の基本

  1. 毎日の現金残高合わせができていますか。
  2. 帳簿への記帳(入力)が適時・正確にできていますか。
  3. 証憑書類の整理保存がきちんとできていますか。

発生主義による月次決算

  1. 売上を出荷、相手方への納品時に計上し、仕入を入庫時に計上できていますか。
  2. 毎月の在庫を実地棚卸や概算計上等の方法で把握し、月次の売上原価、粗利益 (限界利益)を把握できていますか。
  3. 販売費や一般管理費を月次で計上できていますか。
  4. 減価償却費の月割計上ができていますか。
  5. 固定資産税や労働保険料などまとめて支払う費用を月割で計上できていますか。
  6. 売掛金や買掛金の残高管理を行い、請求漏れや入金遅れ、二重請求ミスなどの防止や、資金繰りに活用できていますか。
  7. 在庫管理を行い、誤発注、誤納品、滞留在庫、紛失・盗難、在庫切れの防止などに活用できていますか。

現金主義と発生主義

現金の動きを見るか、物の動きを見るか

会計処理(記帳)の方法には、現金主義と発生主義があります。
現金主義とは、現金の動き(入出金)を見て、取引を計上(記帳)する会計処理です。
一方、発生主義とは、商品の出荷、納品、入庫など物の動きを見て、取引を計上(記帳)する会計処理です。
税務署や金融機関は、この発生主義による決算書を求めているため、期中において、現金主義で会計処理した場合でも、期末には発生主義に組み替える必要があります。

現金主義と発生主義の違い

販売取引と仕入取引について、現金主義と発生主義の違いを見てみましょう。

(1) 販売取引における売上計上の違い

現金主義の場合、代金の入金(売掛金の回収)があった時点で売上を計上します(図表1①)。そのため、商品を販売した時点(商品の出荷、納品時)では、売上や売掛金が記帳されていないことになります。
これに対して、発生主義の場合、得意先に商品を販売した時点(出荷、納品)で、売上や売掛金を計上します(図表1②)

図表1 販売取引における現金主義と発生主義の違い
図表1 販売取引における現金主義と発生主義の違い

 

(2) 仕入取引における仕入計上の違い

現金主義の場合、仕入代金(買掛金)を支払った時点で仕入を計上します(図表2①)。そのため、商品を仕入れた(入庫)時点では、仕入や買掛金は記帳されていないことになります。
これに対して、発生主義の場合、仕入先から商品が納品(入庫)された時点で仕入や買掛金を計上します(図表2②)。

図表2 仕入取引における現金主義と発生主義の違い
図表2 仕入取引における現金主義と発生主義の違い

発生主義で計上できるようになれば・・・

このように、発生主義は現金の入出金にとらわれずに、売上や仕入を計上するため、毎月の業績を正しくつかむことが可能です。
また、発生主義では商品の引き渡しと同時に売掛金が計上され、仕入先からの納品時に買掛金が計上されるため、資金繰りの予定が早めにつかめるうえ、請求や回収の漏れ防止にも役立ちます。
なお、中小企業が会社法上の計算書類等を作成する際の会計処理等を示す「中小会計要領」では、「収益・費用の基本的な会計処理」として発生主義による会計処理を求めています。

なぜ、証憑書類の整理保存が大切なのか?

整理保存されていないと・・・・・

領収書や請求書などの証憑書類をクリップなどでただ束ねているだけだと紛失の恐れがあります。きちんと整理保存しましょう。

証憑書類とは・・・・
領収書や請求書、納品書など取引があったことを証明する書面のことを証憑書類といい、その記載内容をもとに、記帳し、会計帳簿を作成します。証憑書類などの原始記録は、取引事実や適正な会計処理の証拠書類になります。

証憑書類の整理保存の流れ

証憑書類を受け取ったら、まず、記載内容(取引先名、年月日、金額、摘要など)に誤りがないかを確認します。
受け取った書類は、売上請求書控などの売上関係書類、仕入請求書などの仕入関係書類、現金取引関係書類、税務関係書類など、その種類ごとに分類します。
分類した書類には、発生順に一連の番号(証憑書番号)を付け、同じ番号を会計伝票にも記入します。
つぎに、分類した証憑書類を所定の証憑書綴に貼るなど、ファイリングして、整理棚に保管します。例えば、領収書は「証憑書綴」に貼ります。納品書、請求書などは事業年度ごと、取引先ごとに区分してファイリングします。ファイルは「売上請求書控・・・水色」「仕入請求書・・・黄色」など、種類ごとに色分けしておくと見た目にもきれいで、後から探しやすくなります。
決算後は、期ごとに箱に入れて保管しますが、帳簿書類の保存期間は法令で決められていますので、その期間はしっかり保管してください(注1)。
以上が証憑書類の整理保存の基本的な流れになります。

(注1) 原則として商法10年、税法7年、ただし青色欠損金の繰越控除の適用を受ける場合は9年。

整理保存ができれば、会計の信頼性も高まる

証憑書類が秩序正しく整理保存されていれば、書類の紛失、誤記や転記ミス、領収書の二重使用、社内不正が起こりにくくなります。また、納品書と請求書との突合により過大請求を防止することができます。
容易に証憑書類を取り出すことができれば「何を、いつ、いくらで、購入したか」をすぐに見ることができますし、経営判断に必要な情報を、社長が迅速に確認することができます。
経理にとって証憑書類の整理保存は基本中の基本です。

証憑書類の整理保存がきちんとできるようになれば、会計の信頼性が高まりますし、税務調査があってもスムーズに対応できます。

 

現金管理の心得

現金管理を適正に行うことは、会社規模の大小にかかわらず、経営の基本であり、税務 調査でも厳しくチェックされる点です。

金庫内の現金は、1日1回、金種ごとに数え、実際の現金有高と帳簿残高が一致することを確かめます。ところが、社長が、会社の小口経費を立て替えたり、反対に、個人的な支払いのために会社のお金を借用する場合があります。この場合、精算が行われなかったり、ルールにもとづいて現金処理が行われなかったために帳簿上の現金と実際の現金が合 わないことがあります。

このような状態は、社長の公私混同を招くだけでなく、社内の気のゆるみを引き起こし、 社員による不正も起こりやすくなります。

現金管理のポイントは、社長個人のお金と会社にある現金を厳格に区別し、ルールにも とづいた処理と定期的なチェックを徹底することです。まずは、チェックリストを参考に、 現状を確認してみましょう。

現金管理の状況をチェックしてみましょう!

  1. 会社と個人のお金がきちんと区別されており、社長が直接現金の受払いをしていない。
  2. 社長以外の人が現金の管理責任者として明確に決まっている。
  3. 金庫と鍵は管理責任者が管理している。
  4. 銀行印は社長が保管している。
  5. 毎日の出納締め後に、「現金収支日報」などを作成し、管理責任者の承認を得る仕組みになっている。
  6. 管理責任者は、月に数回、帳簿上の残高と実際の現金残高とが一致しているかをチェックしている。
  7. 現金(または小切手)による集金、現金売上などは、その日のうちに銀行に預けている。
  8. 現金残高はなるべく少額にし、余分な現金は銀行に預けている。
  9. 売掛金等の入金は、銀行振込にしてもらっている。
  10. 現金で支出するものの範囲、1件当たりの支出限度額を決めている。
  11. 経費などの支払いで一定金額以上のものは銀行振込にしている。
  12. 支払いは領収書、請求書をもとに行っている。慶弔金など領収書がもらえないものは社 内発行の「支払証明書」などを使用している。
  13. 正規の手続きによらないメモ等による現金の支払いは禁止している。
  14. 仮払い等は上司等の承認を得ているものに限って支給するようにしている。
  15. 仮払金や旅費の精算は、用務終了後や出張から帰着後、速やかに行うことを徹底してる。